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さかなの瞼

diary of chapter6

「人間そっくり」安部公房

正気から見れば狂人は”キチガイ”であるが、狂人から見れば正気はやはり”キチガイ”である。つまり確立したはずのアインデンティティは何の説得力も持たない。安部公房の「人間そっくり」はそういった内容である。

人間そっくり (新潮文庫)

人間そっくり (新潮文庫)

 

とある放送作家(主人公)の元に自称”火星人”が訪れる。しかし直前にその妻とされる人物からとある事情により30分だけ自称火星人を足止めすることを依頼されたのだ。はじめは難なく対応できると思っていた主人公だが、自称火星人の手練手管な話術で思わぬ展開へと進んでいく。

特に印象深かったのは「狂人保険(正気保険)」のくだり。正気が狂人になるリスクのための保険なのだが、保険に入るには「正気」であることを立証しなくてはならない。例えば生命保険で健康状態を告知するのと同じだ。しかし正気を立証するのはなかなか難しい。何をもって”正気”と言えるのか?このあたりは安部公房らしくシニカルに描けていると感じた。

そうゆう意味でこの作品がSFであるのかそうでないのかさえも判断できない(苦笑)

p.s.作中「気違い」という表現が使われているため当記事もあえて「キチガイ」を使っています。本来あまり表現としては良くないと認識しています。